ワインやチーズのラベルで目にするAOCやAOP。例えば「AOPブルゴーニュ」のワインでは「Appellation Bourgogne Protégée」などと小さく記載されています。
これはいったい何?誰が管理してるの?そんな疑問をまるっと解決(のはず)!
フランスを中心に、ヨーロッパでの「ワインの地域呼称の定め」を解説していきたいと思います。On y va!
そもそも「保護原産地呼称」とは?
「保護原産地呼称」とは何か?何のためにあるの?
保護原産地呼称(ほごげんさんちこしょう、Appellation d’Origine Protégée (アペラシン・ドリジン・プロテジェ))は欧州連合(EU)統一の原産地名称保護制度における地理的表示のひとつ。(中略)ワインやチーズ、農産物などに対して、土地由来による差別化を認定するための制度のひとつである。
引用:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E5%8E%9F%E7%94%A3%E5%9C%B0%E5%91%BC%E7%A7%B0
メロンなどの果物や野菜、ワイン、チーズなどに張られたステッカー(エチケット)を見ると載っているアレ!です。
つまり、「ここで造られたものには、ここで造られたという証を与えて、双方のブランド価値を高めて保護しよう!」というヨーロッパ全域で共通のマーク(決まり)のこと。
1922年に制定されました。
1935年にこれらを管理する機関として、原産地呼称委員会 I’NAO
(イナオ Institut national de l’origine et de la qualité)が造られました。
AOCとAOPの違いは?
AOCとAOPの違いは、基本的には同じと考えてOK。
AOCは 制定対象がフランス国内のもの
AOPは 制定対象がヨーロッパ全域のもの
AOCはローカル性が高く、AOPの方がAOCに比べより広域で、よりナショナル性の強いもの、ということになります。
AOC(アー・オー・セー)とは
L’Appellation d’origine contrôlée (AOC) désigne des produits répondant aux critères de l’AOP et protège la dénomination sur le territoire français. Elle constitue une étape vers l’AOP, désormais signe européen.
L’Appellation d’origine contrôlée (AOC)は「AOP」の基準と同等に制定されているもので、フランス国内を保護対象とする(制定)階級。ヨーロッパ全域を対象とする「AOP」に含まれる1階級とされる。
※筆者独自の翻訳であり、公式な翻訳ではありません。
AOC(アー・オー・セー)はL’Appellation d’origine contrôléeの略。
1935年に制定が行われました。
「原産地統制呼称」の意味で、d’origineの部分に産地名(生産地名)が入ります。
例)AOCグラーヴのボルドーワインの場合 : Appellation Grave contrôlée (アペラシオン・サンテ-ミリオン・コントロレ)
AOP(アー・オー・ペー)とは
AOP(アー・オー・ペー)はAppellation D’origine Protégéeの略。
「(ヨーロッパの)原産地保護呼称」の意味で、AOC同様、d’origineの部分に産地名(生産地名)が入ります。
例)AOPグラーヴのボルドーワインの場合 : Appellation Grave Protégée(アペラシオン・サンテ-ミリオン・プロテジェ)
AOC(アー・オー・セー)にかぶる(を含む)形で、2008年に制定され、2009ヴィンテージからエチケット(ラベル)表記が開始されました。
AOC、AOPどちらにも共通していること
畑の管理方法(ブドウの醸造方法など)や、醸造方法(樽使用や添加物など)に関して厳しい規制を設けており、それを全てクリアーした高品質なワインだけがエチケット(ラベル)に記載することが可能です。
IGPってなんだろう?
IGP(イー・ジェー・ペー)はIndication Géographique Protégéの略。
AOCとAOPと同様に、「原産地名称保護」の意味。2つに比べヒエラルキー内での階級が下の(規定が緩やかのな)ものに対して制定がされています。
2009年に制定されました。
その他、以前に使われていた階級
IGPが制定される前、緩やかな規定の元造られていたワインに対する階級として使われていたものがありますが、実際の生産量が減少(ワインの生産技術向上による品質向上などが理由)などにより、廃止されました。下記にご紹介します。
- Vin de qualité produit dans une région déterminée (VQPRD)
- Vin de table(ヨーロッパ制定)
→2009年7月31日をもって廃止。
- appellation d’origine vin délimité de qualité supérieure (AOVDQS, や VDQSにあたる)
- Vin de table(フランス制定)
→2011年12月31日をもって廃止。
まとめ
2009年に改正が行われて以降、分かりやすくなった「原産地名称保護」。以前のようにフランスだけの独自な階級分けではなく、ヨーロッパ全域として統一規定する目的の1つとして、
中国をはじめとする国際的なワイン需要の増加・輸出増加による、「分かりやすいワイン化」があります。
(もちろん)「高い階級だけが美味しいワイン」ではない。(完全な余談)
日本ではIGPのワインはほぼ見かけることがありませんが、階級が高くなくても、おいしいワインはたくさんあります。現に、私が住んでいたボルドーで出会ったソムリエ仲間は「お手頃で美味しいIGPワインをスーパーや発見し、友人と共有し、家で家族や恋人と飲むこと」を楽しみとしている子がたくさんいました。
あえてAOCやAOPで決められている品種を使わずに、IGPの階級で「素晴らしい美味しいワイン」を造り出す生産者や、規定にこだわらず「私のワインは私のワインだ」とプライドを持っている生産者がたくさん居ます。
安全と美味しいの基準を作ること、分かりやすくなるなる為にすること、は素晴らしいことです。
でも、それだけが「美味しい・素晴らしいの基準であること」ではないと思います。
ワインとの一期一会も同じく、素晴らしいことです。
素敵なIGPワインを見つけたら、是非教えてください。